会長 ご挨拶

小林達明

昭和34年1月生まれ
京都大学大学院農学研究科博士前期課程終了、同博士後期課程中退
農学博士
現在、千葉大学附属図書館松戸分館長、同大学園芸学部教授

 これからの緑化はどうあるべきか、まずは現在の課題から考えたいと思います。一つは災害の多発。気候変動が進み、従来では考えられないような集中豪雨や暴風が多発するようになりました。それに応じて、土砂災害防止法や流域治水関連法による施策が進みつつあります。それらの趣旨は、災害リスク情報を公開して土地利用を調整すること。従来は、政府がインフラを整備して災害リスクを一定基準以下に低減するように対策が進められてきましたが、気候変動によって基準を越えた災害が起こりやすくなり、政府がゼロリスクを保証する代わりに住民自身が安全を選択する仕組みに変えると言うことでしょう。話題になっている生態系を活用した災害リスク削減(Eco-DRR)やグリーンインフラもそのような文脈のもとで動いています。
 ただし、わが国ではすでに稠密な土地利用が進行し、土地は重要な資産となっていることから、ことは簡単に進むとは思えません。資産価値を維持するために、自身の土地の計測される災害リスクを低減させるように人々は動くと思われます。端的には、土砂災害警戒区域に指定された急傾斜地の斜面を切り盛りして斜面長を短くし、レッドゾーンの該当から外すような開発が都市部ではすでに進んでますし、低地では水害リスクを低減する盛土造成が進むと思われます。そのような動向に目配りしつつ、地域の緑のよさを保てるような緑化を考える必要があると思われます。
 全く異なる方面ですが、都市では、健康のための潤いのある町づくりが進んでいます。その一つとして、道路構造令が改訂されて、居心地よく歩きたくなる歩行者利便増進道路(ほこみち)の規定が新設されました。この規定によると、歩行者の交通量が多い道路にあっては3.5m以上、その他の道路にあっては2m以上を確保した上で、余地を利便増進誘導区域として指定でき、ベンチなどを置いて歩行者がくつろげるスペースを設けることができるようになりました。
 一方で改正都市再生推進法が成立し、ウォーカブルな町づくりが進められており、公共空間に供した土地の固定資産税等が一定期間半減されるようになりました。自転車道の整備も進んでいます。このような制度を活用しながら、歩きやすい、健康増進に寄与する町づくり、豊かな街路づくりがさらに進んでいくと思われます。これに応じて、より人に親和性高い緑地が求められるようになると思われます。
 SDGsの考え方の普及などで、緑の役割が大切なことは認識されるようになってきましたが、その効用を社会に科学的に説明することは今後ますます重要になるでしょう。本協会は、持続可能性豊かな国土のために、人々の福祉と環境の改善に貢献する緑化技術の開発と普及にますます貢献していきます。

理事長 ご挨拶

柴田和正

柴田和正

 日頃の皆様のご支援、ご協力に厚く御礼申し上げます。
 私達を取り巻く環境は、相変わらず大変厳しいものがあります。環境の保全、生態系の保全をキーワードとして、私達は工法や製品をお客様に提供するだけで はなく、真心を添えた緑化を提供するために一体何ができるのだろうか、皆さんのご協力を賜りながら一緒に取り組んでまいりたいと考えてます。
 現在『環境』をテーマにいろいろな取り組みをおこなっておりますが、今後は、いかに『環境を創出』をしていくかが問われるのであり、そして、同時にまた、今こそ『環境を創出』できる協会として大いにその力を発揮できる絶好の機会であると考えます。
 これからも、『環境を創出』する団体として、協会をより一層活性化していく所存でございますので、皆様のご支援ご協力の程をよろしくお願い申し上げます。